イルカ

イルカとは

イルカ(海豚、鯆)は、哺乳類偶蹄目(鯨偶蹄目)に属する鯨類の内、小型の種の総称である。なお、イルカとクジラは分類学的には明確に区別されない。

生態と形態

多くは海に生息するが、カワイルカ類のように淡水である川に生息する種類や、淡水と汽水域を行き来する。

頭頂部に肺呼吸のための1つの噴気孔をもち、体表面下で分枝して左右の肺に繋がっている[1]。呼吸の周期はおよそ40秒である。平均体温は37℃で、体温を保つために体は厚い皮下脂肪に覆われている[1]。泳ぐ速度は最高で時速30km程度とされる[1]。陸棲哺乳類と比較して体重あたりの血液量が多く、血中のヘモグロビン濃度、筋肉中のミオグロビン量が多く[1]、そのため1回の呼吸で長く海中に留まることが出来る[1]。また海中では不必要な心拍を抑制し、血液を脳や心臓などの重要臓器に集中させて酸素消費量を抑えるメカニズムも備わっている[1]。

イルカは一度も泳ぐのをやめず息継ぎもきちんとしながら常に泳ぎ続けている事から、かつてはイルカは全く眠らないのではないかと言われていた。しかし、イルカは半球睡眠(右の脳と左の脳を交互に眠らせる事)の能力を持つことが分かってきており、眠らないという説は現在ではあまり有力ではない。また、右の脳が眠っている時は反対の左目を、逆に左の脳が眠っているときは右目をつむりながら泳ぐ。

体形は紡錘状で、背に鎌形あるいは三角形の背びれを有する種類が多いが、背びれがほとんどない種類もいる。尾側の最後部に尾びれを有し、尾びれを上下に動かして泳ぐ。前足に相当する部分に胸びれがあり、後ろ足は退化してわずかに骨のカケラとして体内に残る。2006年に腹びれのあるイルカが発見されたこともある[2]。

多くは肉食であり、魚類や頭足類、甲殻類などを捕食する。また、水分はあくまでも食料の魚類などから摂取する。水分として直接摂取するほか、脂肪を体内燃焼したときに生じる代謝水もある。海水からは摂取する割合はごく少量であり、意図的に摂取しているのではないと考えられている。海水を大量に摂取した場合、排尿が促進されて脱水症状に陥る点は人間と同じである。イルカの歯はおよそ80本あるが食べるときは丸飲みである。

肺呼吸であるので、他の哺乳類と同様に、咳をしたり、肺炎になったり、かぜをひく[3]。水族館などでは、日頃の行動観察や体温測定(肛門で測定する)、採血(通常尾ひれから採血を実施する)などで体調管理をする[3]。ただし、ショーへの参加を嫌がり仮病をつかうイルカもいるとされ、判断が難しい場合もある[3]。

イルカは単独で行動するケースも見受けられるが、複数匹で群をなして行動することが多い。また複数の実験・観察結果を通して、噴気孔付近から出すクリック音を使って同種の個体同士でコミュニケーションする可能性が指摘されている。全般的に好奇心旺盛で人なつっこく、船に添って泳ぐなどしてその姿を人間に見せることが多い。人間は、このような性格を興行やアニマルセラピーとして利用している。

Dolphin anatomy
図1:イルカの解剖図(WikipedianProlific - 投稿者自身による著作物)

生殖と性行動

性別はメスとオスに分かれ、生殖行為を通して一定期間妊娠の後に出産する。生殖器は通常外見からはメスとオスの区別は困難であるが、交接時にはペニスが露出するため容易に鑑別できる。誕生からしばらくの間は母親の母乳によって育てられる。

イルカはヒトと同じように、繁殖以外の目的で、快楽を得るために、交尾を行う。一般的なバンドウイルカは、1日に数回交尾を行うとされている。交尾自体は数秒で完了してしまうが、ペニスやクリトリスを仲間同士で擦り合わせるなどの、社会的な絆を維持するためのソーシャルセックスはそれよりも長く行われる[4]。マウント・ホリヨーク大学のパトリシア・ブレイナン氏は自然死した11頭のメスイルカを解剖したところ、クリトリス周辺の組織に血管や神経繊維、血液が充満することで勃起する組織などが集中していることが分かった。また、一部のクリトリスの神経は直径が0.5mmもあり、これらの神経を覆う皮膚は他の部位よりも薄く、刺激を受けやすい部位だということができる。ブレイナン氏は、イルカのクリトリスとヒトのクリトリスの関連性を示し、イルカのクリトリスも交尾による快楽を得るために機能している機関の可能性があると言及した[5]。

Ecomare - bruinvis Michael met penis (michael-penis-4580-sd)
図2:ペニスが露出したネズミイルカのオス(Ecomare/Sytske Dijksen - Ecomare)